第31回「移転価格課税を受けないためのポイント(1)」
課税を受けないための6つのポイント
中国の税務当局は、移転価格課税の重点調査対象事案の一般的な選定基準を次のとおり示しています。したがって、これらの基準に該当する企業が移転価格調査の対象になりやすい企業であると言えます。
| @ |
関連企業との取引金額が大きい企業 |
| A |
生産、経営管理上の決定に関連企業の支配を受ける企業 |
| B |
長期間にわたり欠損を計上している企業(2年以上連続して欠損が発生している企業) |
| C |
長期間にわたり少額の利益や欠損を計上しながら、経営規模を拡大し続けている企業 |
| D |
損益の変動幅が大きい企業(隔年ごとに利益または損失を計上している企業や通常の範囲を超える利益を計上している企業) |
| E |
タックス・ヘイブン(税負担が無いまたは軽い国(地域))に設立された関連企業と取引を行っている企業 |
| F |
同業種の企業と比べ利益水準が低い企業(同じ地域の同業種の企業の利益水準との比較による) |
| G |
グループ企業内の比較で、他のグループ企業に比べ利益率が低い企業(関連企業に比べ利益率が低い企業) |
| H |
関連企業に対して合理的でない費用を計上し支出している企業 |
| I |
法定の減免税期間の終了後に利益を大幅に減少させる方法などにより租税回避を図る企業、その他の租税回避の疑いがある企業 |
(移転価格課税を受けないための6つの方策)
以下では、移転価格課税を受けないための6つのポイントを説明します。
@ 移転価格税制や課税がどういうものかを知ること
第1のポイントは、以下のように移転価格課税とはどういうものであるかを知ることです。
@ 移転価格課税はどういうものであり、企業にとってどのように大きな影響、問題があるかというこ
とを知ること
A 進出先の国と日本の双方の移転価格税制を理解すること
B 進出先の国と日本の双方の移転価格課税の状況や執行体制を知ること
A 移転価格上の問題のある取引を行わないこと
第2のポイントは、外国の関連会社との取引において意図的なものはもちろん、意図的でない移転価格上の問題のある取引についても行わないように留意することです。ちなみに、移転価格課税は、皆さんに税回避の意図がなくとも結果として所得が移転、税が移転していた場合には、課税されるものです。したがって、わが社は移転価格政策の意図はないから関係がないというものではないのです。自らの取引の内容を十分に把握し、移転価格上の問題がないかどうか検証していく必要があります。十分ご留意ください。
B 移転価格上の問題のある取引の疑いをかけられないこと
第3のポイントは、移転価格上の問題のある取引の疑いを各国の税務当局からかけられないように留意することです。自らは移転価格上の問題のある取引を意図していない、あるいは移転価格上の問題のある取引ではないと理解したとしても、その適否を判断するのは各国の税務当局です。税務当局に移転価格上の問題のある取引の疑いを持たれないようにすることが重要です。
C 移転価格上の問題がないことを課税当局に説明できる準備をする
次に、移転価格上の問題がないことを税務当局に説明できる準備を怠らないこと。これが第4のポイントです。具体的には、取引資料の保管、説明資料の準備など、いわゆるドキュメンテーションの備えが必要となります。
D 移転価格課税を予防する方策を採ること(事前確認制度を活用する)
さらに、移転価格課税を事前に予防する方策を採ることです。これが第5のポイントになります。具体的には、関係する二国の税務当局間による事前確認制度を積極的に利用することが挙げられます。
E 税務調査への的確な対応
最後に、移転価格調査を受けた場合には、移転価格問題の事実がないことをいかに要領よく明瞭に説明するか、いかにして疑念を持たれない対応をするかが重要になります。的確な調査協力、調査対応を行うことが調査そのものの効率的な展開につながり、また将来に向けて税務機関からの信頼を得ることにもつながります
「ミ二知識(28)」4月は中国の「税収宣伝月間」でした
今日の税務行政では、納税者が税務行政に対する理解、信頼を高め、自主的に正しい申告納税を行ってもらうことが最も重要であると考えられています。そのため、各国の税務当局では、適切な調査や納税者サービスの充実を進めるとともに、税務の広報活動等についても力を入れています。
中国でも、毎年4月を「全国税収宣伝月間」として税の広報活動に力を入れており、本年も各種の活動が行われています(本年で第15回目の開催)。皆さんご存知でしょうか。本年のテーマは昨年と同じく「依法誠信納税、共建小康社会(法に基づき誠実に納税し、共に生活に困らない安定した社会を築く)」であり、以下のような広報活動が実施されました(国税発【2006】32号参照)。ちなみに、日本では毎年11月11日から17日までの1週間を「税を考える週間」として広報活動、租税教育活動などが実施されています。
1.座談会の開催
「依法誠信納税、共建小康社会」をテーマにした座談会を3月31日に開催し、税務当局及び政府機関の幹部のほか、オリンピックの金メダリスト、銀行や民間企業の幹部、中央財経大学の副学長等が参加しました。
2.各種の税広報番組のテレビ放送
今年1月に改正された個人所得税法をテーマにしたインタビューや解説討論番組、毎日5分間全22回放映の「馬斌説税(馬斌が税について語る)」というタイトルの税法解説番組、国家税務総局制作による税のテレビコマーシャルが中央電視台で放映されました。
3.脱税事件の公表及び納税表彰
4月下旬の新聞発表会で一部の典型的な脱税事件を公表するとともに、法に基づき誠実に納税している納税者に対する表彰が各地で行われています。公表された脱税事件に関しては後日紹介したいと思います。
4.税の漫画コンテスト
国家税務総局と、人民日報が主催する「風刺ユーモア報」紙の共催で「依法誠信納税、共建小康社会」をテーマにした漫画コンテストが開催されました。
1等賞:賞金2,000元(2名)、2等賞:賞金1,000元(5名)、
3等賞:賞金500元(10名)、優秀賞:「風刺ユーモア報」紙の1年間無料購読
5.税のアニメーション作品コンテスト
国家税務総局と中国税務雑誌社の共催で「依法誠信納税、共建小康社会」をテーマにしたアニメーション作品コンテストが開催されています(募集締切りは2006年6月15日)。
(執筆者紹介)
伏 見 俊 行
(中国・中央財経大学大学院教授兼研究員、中国・国家税務総局揚州税務学院客員教授)
(執筆協力)
小 杉 直 史
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