作成の概要

 [  はじめに | 概要 | アンケート調査結果 ]

概  要


1.総括

(1)中国政府は、@WTO加盟前からWTO協定に適合するよう法制度の整備を進め、膨大な量(地方法規を含めると2,500を超えると言われる)の法律・法規の改廃・制定を行うとともに、AWTO加盟文書による約束事項の遵守を表明しており、今後も関連法規の改正が期待されることから高く評価できる。
WTO加盟後の中国政府の対応については、昨年の加盟日から遅れて実施されたものが非常に多いとの指摘があったが、全般的には、WTO加盟時の約束事項について、概して順調に実行に移されているという意見が多かった。

(2)問題点として、以下のような指摘があった。
@ 一部品目で関税引き下げが不履行である、従量税が適用されている。
A 輸入割当の内容、実施方法が不透明である。
B 投資認可手続きにおいて裁量事項が多く認可の取得要件が不透明である。
C 加盟時に約束した関連法規は制定されても、実施細則が未制定であったり、公表されていない内部規定により実質的な審査が行なわれているなど、当局の裁量権が大きい。
上記の他、WTO加盟後、中国政府は8件のAD調査、1件のSG調査(鉄鋼については正式発動された)を開始しており、中国政府の保護主義的対応への懸念が関係産業界から提起された。
 一方、知的財産権については、制度上の整備は進んだものの、実施体制(行政、司法)上で問題があること、特許審査が迅速に行われていないこと、薬品の審査にあたって情報保護が不十分であることなどから、中国でのビジネス展開に大きな障害となっているとの指摘があった。

(3)在中国日本商工会議所会員企業を対象に2002年11月上旬に実施した「WTO加盟後の中国経済」アンケート調査結果(有効回答106社、回答率25.7%)からは、日系企業を取り巻く対中ビジネス環境、WTO加盟後の約束の履行状況の評価などが明らかになった。

●日系企業の進出動機および対中投資のメリットは、「中国市場の大きさ」にあり、営業実績については、回答を寄せた企業の7割強が2001年(実績)、2002年(見込み)とも「黒字」または「均衡」と回答。対中ビジネスについて「評価できる」との回答が過半数を超え、9割以上の企業が今後の事業拡大の「予定がある」または「検討中」としている。アンケート結果からみる限り、WTO加盟1年後の対中ビジネスは評価できるということになる。

●また、海外投資国のベスト5に入るとした企業は5割以上あるものの、売上高比率を5%以下とする企業が過半数を占め、中国市場の重要性の高まりとともに今後は投資収益の拡大が課題となっている。

●中国のWTO加盟1年を前に、「中国のWTOルール履行に対する問題点」を質問したところ、「政策法規の不透明性」、「煩雑な行政手続」と回答した企業が圧倒的に多く、次いで「知的財産権保護の不徹底」、「サービス分野の未開放」、「中央と地方の政策の不一致」などが続き、WTO約束履行スケジュールに基づく、投資環境の改善が期待される。こうした問題点は、本報告書のの業種別レポートやヒアリングにおいてもよく指摘されているところである。

●対中ビジネスの展開上解決されるべき問題点としては、@非関税障壁の撤廃(行政指導による市場開放への抵抗、企業・製品登録および手続きの簡素化・迅速化)、A外貨送金(外貨管理手続の簡易化)、B貿易権および国内販売権の付与、C政策法規の明確化、D中央と地方の政策統一性に関する問題などが指摘されている。
貿易に関する事項

(1)貿易権
加盟後3年以内に全ての外資系企業に対し貿易権の開放が約束されているが、スケジュールどおりの開放については、貿易業者だけでなく、関係業界から強い期待が寄せられている。また、鋼材など一部鉄鋼製品に対して、加盟後3年間特定の許可を受けた貿易会社のみが輸出入を認められるという指定貿易制度が実施されているが、現在指定企業は全て中国企業であり、指定先企業を外資にも早期に拡大してほしいとの要望があった。このほか、外資および国内企業に対するWTO加盟1年後の貿易権付与状況の公表を望む要望があった。

(2)関税
ほとんどの品目について、2002年1月1日より、約束どおり関税率引き下げが実施されている。ただし、感光材料(写真フィルム等)など一部化学品については、WTO加盟時に約束した従価税ではなく従量税が課せられており、結果的に超高関税率のままである。これについては早急な改正を要望したい。また、必ずしもWTO加盟時の約束事項ではないが、関税改定により母材(ブリキ原板)の関税率が製品(ブリキ)のそれを上回るという不合理な税率となっているなどの問題点も指摘されている。

(3)輸入割当
 自動車、二輪車等については、経過措置として、最長2005年までの輸入割当が認められているが、割当の実施方法が不透明であり、これについては公平な割当の実施を要望したい。
例えば自動車では、@WTO加盟後2年目の輸入割当数量79.35億ドルの内訳の明確化と分配への公平性、A輸入タイヤの割当本数枠増加とその割当内容、割当先の明示など。

(4)基準・認証制度
 新認証制度の適用については、十分な適用猶予期間を設置することや国際基準の代替を容認するなど、柔軟な姿勢が求められる。また、新しい標準の設定に当たっては、国内企業のみではなく外資企業からの意見聴取も行ってほしい。

(5)貿易関連投資措置(TRIM)
 中国政府は、外資企業三法(外資企業法、中外合資経営企業法、中外合作経営企業法)を改正し、ローカルコンテント要求等WTO・TRIM協定に反する条項を削除した。しかしながら、国産化率達成の要求が依然として存在するとの指摘が、一部企業からあった。

(6)アンチ・ダンピング、セーフガード
 WTO加盟後、中国政府は対外貿易経済合作部に進出口(輸出入)公平貿易局を新設し、AD、SG調査を活発化した。WTO加盟後1年間で、AD調査8件、SG調査1件が実施された。鉄鋼製品の輸入に対するセーフガード調査については、2002年11月20日より確定措置が実施されており、関係産業界からはWTO協定との整合性上、明らかに疑義があるとの指摘があった。
「アンチ・ダンピング条例」「セーフガード条例」が2002年1月1日から施行され、WTOルール整合性や透明性などの面で前進が期待される一方、AD公告前の受訴基準の明確化、損害の判定基準の明確化を求める意見が関係業界から強く寄せられた。
また、国有企業を主体とする鉄鋼、化学等の素材産業に比較して、外資を含めた自動車、電機等のユーザー産業の意見を十分聞いていないのではないかとの指摘があった。

投資に関する事項

(1)政策一般
 WTO加盟の約束に沿って、外資への開放を一段と進める方向で、「外国企業投資産業指導目録」が改定されたことを評価する意見がある一方、産業ごとに、「奨励」であるとか、「制限」であるとかの指定をすることがそもそも時代遅れであるとの指摘もあった。また、地域制限や出資比率制限、店舗数制限なども、経済の国際化が進展する昨今、もっと柔軟に軽減する方向で対応することが現実的で中国国民の二−ズに応えるものであるとの指摘もあった。

(2)投資認可
 サービス産業(流通、物流、通信、銀行、保険等)において、中国政府が、WTO加盟時の約束に沿って着実に外資に市場を開放していくか注視していきたいとの意見が多く出された。投資認可においては、銀行、保険などの分野で認可の数的制限は行わないことになっているにもかかわらず、WTO加盟後1年間で保険1社しか認可されないのは運用上問題があるとの指摘があった。また、地方政府から既に認可を取得していた投資項目について、WTO加盟後、中央政府から認可の取り直しを求められたケースなどが報告された。
 製造業分野においては、特定の投資認可案件について標準的な審査期間の設定がなく、投資がいつ認可されるのかされないのか、結論が出るまで非常に長い時間がかかることが多く、中国側の全般的に投資を歓迎するとの方針に反するものではないかとの意見があった。一例をあげると、自動車、二輪車に対しては、「汽車(自動車)工業産業政策」(94年)でいうところの「1外資2合弁」(29条)規定が改定されていない現状や、二輪車を外資投資の「奨励」項目としておきながら、ナンバープレート登録規制を実施する都市が年々増えているなど、中国政府のいう投資促進の主旨に反しているとの指摘があった。
 また、WTO加盟3年後に、貿易業と流通業が外資に全面的に開放されることになっているが、単一の企業が製造業の認可と併せ、あるいは、単独で、貿易業および流通業双方の認可を受けられるように規定が整備されることを望むとの強い意見が関係業界からあった。
さらに、多くの企業が投資性公司を設立し、それを中核に企業集団を形成しているが、自社の輸入製品に対するアフターサービス活動が許されていないなど、いまだ国内企業と同様の経営範囲が得られておらず、早急な改善措置を期待したいとの意見などがあった。

知的財産権保護
 
中国政府の取締強化にもかかわらず、中国における模造品、海賊版問題は、WTO加盟後も極めて深刻な状況が続いており、中国でのビジネス展開に大きな障害となっているとの指摘が、ほぼ全ての業界から出された。2001年末実施したアンケート調査結果によれば、中国に進出している日系企業の5割強(54%)が、知的財産権上何らかの被害を受けているとの回答である。知的財産権侵害による被害者は、権利を有する企業のみならず、例えば、ニセモノならそれを購入する中国企業や消費者も被害者となる。知的財産権問題への対応は、広範な経済的利益と国家の威信に関る問題であり、かつ中国の望む高技術製品の導入にも影響が出るものであり、以下のような措置をとるべきであるとの意見があった。
@ 刑事罰の強化(知的財産権侵害罪への法の厳格な適用)
A 行政面での取組強化(罰金額の引上げ、押収品の完全破棄)
B 司法面での取組強化(損害賠償額の引上げ、判決内容の完全執行)
C 水際規制の強化(税関での権利侵害品の取締強化)
D 地方保護主義の排除(特に、広東省、福建省、江蘇省で保護主義が横行)

また、DVD規格特許に典型的にみられるように、日本、米国、欧州では特許権が既に成立しているにもかかわらず、中国では権利が未だ成立していない特許出願が多数存在していることから、多くの企業が特許審査の迅速化を要請している。
薬品の審査にあたっては情報保護、特に新薬開発オリジナルメーカーの権利保護が不十分との指摘があった。

結語

本稿は、中国で事業展開をしている在中国日本商工会議所会員の15業種から提出いただいたレポートを中心にWTO加盟1年を迎える中国経済の総括を試みたものであり、本稿で紹介し尽くせない事項や問題は多々ある。詳細については、業種別の各項を御覧いただきたい。また、アンケート調査でも、「中国のWTOルール履行に関する問題点」の設問に対する回答結果が出ている。WTO加盟後の対中直接投資やWTO加盟に伴う法改正については参考資料としてとりまとめているので、こちらもご参照いただきたい。
はじめに ◆概要 ◆アンケート調査結果 
◆業種別現状と要望事項(WEB非公開)


「WTO加盟後の中国経済2002」
在中国日本商工会議所 調査委員会