証券

1.現状

(WTO加盟に伴う中国の市場開放、規制緩和、ならびにその経過措置の現状)

1.WTO加盟に係る承諾事項

加盟時までに、①外国証券会社は、中国側の仲介なしでB株の取引を直接行うことができる、②外国証券会社の在中国事務所は、中国の証券取引所の特別会員となることができる、③外国証券会社は、外資比率33%までの証券会社を設立し、国内証券投資ファンドマネージメント業務を行うことができる。

加盟後3年以内に、④ファンドマネージメント業務の外資比率を49%まで引き上げることができる、⑤外国証券会社は、外資比率1/3までの証券会社を設立し、中国の仲介業者を経ずに、A株の引受(取引は不可)、B株・H株、政府債、社債の引受と取引、ファンドの設立を行うことができる。
2-1.B株式の直接取引、特別会員

従来、外国証券会社はB株式の仲介、しかも、中国の証券会社を通じた間接的な売買のみを行うことが許されているに過ぎなかった(B株市場は外国人投資家限定の市場であったが、2001年2月、6月に国内投資家にも開放された)。しかし、上記1.①により、外国証券会社は、B株の直接取引を行うことが可能となり、2003年10月末時点では、上海で41、深圳で19の海外証券取扱機関がB株の直接取引を行っている。なお、上海、深圳両市場ではそれぞれ3社が特別会員として認められた。

2-2.合弁証券会社・ファンドマネージメント会社の設立

  外国資本と中国資本の合弁証券会社・ファンドマネージメント会社設立の法的な裏付けとなるのは、2002年6月1日公布、7月1日発効の「外資参加証券会社設立規則」と、「外資参加基金管理会社設立規則」である。

「外資参加証券会社設立規則」によれば、外国資本に対する条件等は、

(1)所在国の法律に則った証券経営資格を有し、証券業務の経営年数は10年以上で、直近3年以内に証券監督機構ならびに司法機関により、重大な処罰を受けていないこと、

(2)出資比率は直接・間接を問わず1/3を超えてはならない。中国側出資者の証券会社のうち少なくとも1社の出資比率は1/3を下回ってはならない、

(3)外資側の出資はハードカレンシーによる出資に限定される(中国側は現物出資でも可)、である。

合弁証券会社の経営範囲は人民元普通株(A株)・外資株(B株、H株など)・政府債・社債の引受、外資株・政府債・社債の売買仲介、政府債・社債の自己売買である。また、外資の参加方式は、中国の証券会社への直接出資、もしくは合弁証券会社の設立による。直接出資の場合、出資を受けた中国の証券会社は、外資系証券会社として扱われ、従来、単独では可能であったA株式の売買はできなくなる(A株の売買は独立した組織・別会社で行う)。

「外資参加基金管理会社設立規則」では、外資比率上限は当初33%、WTO加盟後3年以内に上限49%とし、会社設立と開業の二段階で当局の認可を得ることとされている。

2-3.QFII制度の導入

WTO加盟時の事前合意内容とは別に、中国証券市場の対外開放を最も深く印象付けたのは、2002年12月からのQFII(Qualified Foreign Institutional Investorsの略。適格海外機関投資家)制度であった。これは、批准を受けた外国機関投資家に対して、国内人民元建証券資産への投資を制限つきながら認めるものである。投資対象は、外貨建以外の取引所上場株式、上場国債・転換社債・社債、CSRCが認めたその他の金融商品である。

2002年12月1日に発効した「適格海外機関投資家国内証券投資管理暫定方法」によると、市場開放は制限的である。具体的には、①資格を申請する外国証券会社には、営業年数30年以上、資本金10億米ドル以上、直近会計年度末預かり証券資産は100億米ドル以上などの条件が設けられる、②投資対象については、上場株式の場合、単一QFIIの持ち株比率は発行済み株式数の10%、QFII合計では20%を超えてはならない、③クローズエンド型ファンドを運営するQFIIの場合、元金振込後3年満了以降、国家外貨管理局に海外持出を申請できるが、1回に持出可能な金額は投資元本の20%以内で、次回持出との間には1カ月以上の間隔をあける必要がある、などの資格要件・投資制限・資金持出制限が課されている。

 

2.WTO加盟を踏まえ、中国側が施行した関連措置(①にて言及した)における具体的な問題点、改善すべき点。関連措置が施行されていない場合には、未施行による問題点。

証券関連のWTO加盟に係る事前承諾事項は、着実に実行に移されており、基本的に問題はない。外資との合弁証券会社については、2002年12月に湘財証券と仏クレディ・リヨネ証券との間で、初の中外合弁証券会社「華欧国際証券」(資本金5億1元)の設立が、CSRCによって認可され、2003年3月には、長江証券と仏パリバペレグリンとの合弁証券会社「長江パリバペレグリン」(資本金6億元)の設立が認可された。
  合弁ファンドマネージメント会社についても、2002年12月に招商証券と蘭INGが第一号の中外合弁会社の設立認可をCSRCから獲得。以来、仏ソシエテ・ジェネラル、ベルギーのフォーティス、独アリアンツなどが後に続き、合弁ファンドマネージメント会社は2003年10月末時点で8社となっている。

WTO加盟に係る事前承諾事項ではないが、QFIIについては、2003年5月にスイスのUBSと野村証券が資格を取得したのを皮切りに、11月18日現在、9社がQFIIとして認定され、投資認可額は合計で16億5000万米ドルとなった。

合弁証券会社・ファンドマネージメント会社の設立に関する問題点を敢えて言えば、外国側の資格要件について、総資産規模等の数値要件がないために、当局の裁量による部分が大きくなっている可能性があることが指摘できる。

 

 

3.WTO議定書で約束されていない事項で、貴業界(貴分野)として改善を望む分野についての提言

1.QFII

QFIIの資格要件・投資制限・資金持出制限は極めて厳しい。まずは、制限内での速やかな開放と、その後には、可能な限り早い時期の制限緩和が望まれる。例えば、「上場企業に対する単一QFIIの持ち株比率は、当該上場企業の発行済み株式数の10%、全QFIIの持ち株比率の合計は同20%を超えてはならない」とされるが、11月18日現在までの投資限度額合計16.5億米ドルが全てA株市場に流入しても、上海A株・深圳A株市場の流通時価総額の1.2%にとどまる。当局が期待するQFII導入効果は、①新規資金流入で株価が刺激される、②ファンダメンタルズや情報開示を重視する海外機関投資家の投資手法が国内投資家に浸透することで、投機性が和らぎ、企業の情報開示も改善される、③結果として株式市場の健全化が促される、などと考えられるが、これが発現するには、より多くのQFIIの資金が流入して、プレゼンスが拡大しなければならない。

2.株式市場の健全化

  株式市場が国有企業改革の出口として機能してきたという歴史的背景からくる根本的な問題は未解決である。具体的には、①国家・法人株など非流通株が2/3を占め、構造的な需給悪化要因となっている(流通株の少なさは投機性の高さの一因)、②支配株主によって上場企業の利益が犠牲にされがちという問題を引き起こしている、③情報の正確性・透明性への不安が強い、などである。2001年以降、当局は矢継ぎ早に諸政策を打ち出し、市場健全化に向けた努力を続けているが、道のりは未だ長い。特に、最大の問題である①については、長期的な視野に立って、投資家の理解が得られるような段階的かつ着実な改革を推し進める必要があろう。

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