第1章エネルギー

3.電力
(1)中国の電気事業の現況

 2003年の中国電気事業における特徴は,経済の急成長等を背景に,2002年を上回る電力需要の急増と,電力需給逼迫の状況の拡大と深刻化の度合いが増したことである。

 2003年の消費電力量は1兆8,910億kWh(速報値)で,2002年の1兆6,386億kWhに比べて15.4%の伸び,発電電力量は1兆9,080億kWhで,同15.3%の伸びとなった。

 2002年に続く急激な需要増に対応するため,発電設備建設も進められ,2003年末の総設備容量は3.85億kWと2002末の3.57億kWに比べて7.8%増加したが,需要増には追いついていない状況である。2002年末の計画では,2005年末の全国の総発電設備容量は3.95億kW,発電電力量は1兆8,300億kWhとしていたが,既に発電・消費電力量は2005年目標を上回り,発電設備容量も目標を達成する勢いである。

2003年中国電力主要統計指標(速報値)

 

2003年

2002年

対前年比(%)

発電電力量(億kWh)

19,080

16,542

15.3

消費電力量(億kW)

18,910

16,386

15.4

総発電設備容量(万kW)

水力

火力

原子力

38,450

9,217

28,564

619

35,657

8,608

26,555

447

7.8

7.1

7.6

37.4

出典:中国電力企業連合会統計信息部発表資料

 業種別では,産業用需要は粗鋼,鋼材,非鉄金属,アルミ精錬など,エネルギー多消費企業の生産が好調だったことも影響して対前年比15.0%,生活用需要は夏場のエアコン需要の急増などが影響して13.0%の伸びであった。

 また,この急激な需要増加に加えて,今夏は昨年から続いている渇水や数十年振りという猛暑などが影響し,各地で需給逼迫の状況を招いた結果,22の省・直轄市・自治区において何らかの形での電力供給制限が行われた。これらの地域においては,中国進出日系企業を含め,昼間の電力供給制限や土日操業が強いられた。

 このような中,この需給逼迫状況に対応するため,急遽需要家側からの対策と供給者側からの対策が講じられつつあり,例えば,ピークシフトを促すための時間帯別電気料金制度の導入拡大や,広域融通を目的として「西電東送」プロジェクトをはじめとした電力網の強化が着実に図られ,各地域において系統整備が進められつつある。

(2)発送電設備の開発計画

1) 中国の発電所の現状と今後の計画

 2003年末の発電設備容量内訳は火力発電2.86億kW,水力9.2億kW,原子力0.6億kWで,火力は全体の74%,水力24%,原子力1.6%となっている。

 2003年初頭の計画では,「十・五」期間中に必要となる運転開始発電設備容量は9,000万kWで、そのうち大・中型発電機ユニットは8,500万kW、また着工される発電設備は1億kWとなるとともに,環境配慮などのために運転停止・廃止する小型火力発電所は1,420万kWとなる見込みである。その中で,2003年に運転開始は2,100万kWと設定された。

【火力発電】

 火力発電においては,2003年は国際石油価格の上昇や石炭単価の上昇,また石炭輸送の問題などにより,一時的に発電停止となる発電所もあり,燃料供給の難しさによる不安を露呈した一方,海南の海底天然ガスやタリム盆地の天然ガス開発など,新たな天然ガス開発に明るさが見えた。この天然ガス開発に伴う大型プロジェクト「西気東輸」等も順調に進んでおり,10月には上海,12月には江蘇省常州までパイプラインによる天然ガスの供給が開始され,さらに浙江省では“西気東輸”天然ガスを利用した初の発電所“半山発電所”の建設が始まった。この他南方地区においては,海南省で,同省で発電した電力を融通し広東省の電力需要増へ対処するために,天然ガス発電拠点の建設を急いでいる(「気電北送」)。中国のガス事業者の試算では,将来的な天然ガス発電規模設定は2020年で2,850億kWh(2000年の100倍)としている。

 火力発電の燃料種別では,石炭火力が最大の割合を占めるが,環境対策が大きな課題とされている。2003年に入り,広東では“2005年までに既存の30万kW以上の火力ユニットに脱硫装置設置義務”が課された他,10月には全国的に従来の二酸化硫黄排出規制措置の強化が発表された。この内容は,①石炭火力発電所新設・増設禁止区域の拡大(21省・区の省都での禁止),②都市近郊部などでの脱硫装置の設置義務,③産炭地山元発電所でも脱硫装置設置用地の確保,④脱硫装置設置促進のための経済的措置の導入 などである。

 2003年に運転開始された火力発電設備容量(全燃料種合計)は2,009万kWとなった。

【水力発電】

 全設備容量に対して約20%を占める水力発電は,積極的に開発するという方向の下に,この2~3年間に相次いで巨大水力発電所の事業決定・着工がなされている。

 2003年に運転開始した代表的な大型プロジェクトは,三峡発電所(総出力1,820万kW)である。8月に最初の1機70万kWが完成し,11月までに6機が運転を開始した。当初予定では2003年内に運転を開始するのは4機だったが,近年の需要急増による需給逼迫を受けて建設を前倒し,2004年に運転開始を予定していた2機を追加完成させた。2004年の運転開始予定は変わらず4機であり,合計10機の完成を目指す。これにより,三峡および葛洲ハ発電所から420万kWの電力が直流500kV送電線を用いて華東地域に送られる。

 その他大型プロジェクトとして大朝山発電所(総出力135万kW)の5号機22.5万kWが6月に運転を開始,また2001年着工の紅水河の竜灘発電所(出力540万kW),2002年着工の黄河上流の拉西瓦発電所(出力420万kW)および瀾滄江の小湾発電所(出力420万kW)の建設は順調に進捗している。さらに,金沙江の渓洛渡・向家?(総出力1860万kW),大渡河の瀑布溝発電所(出力330万kW)が2003年度批准をうけ,また雅?江の錦屏一級水力発電所(出力360万kW)が着工前の準備段階に入っている。

 2003年に運転開始された水力発電設備容量は610万kWである。

【原子力発電】

 原子力開発は,2003年1月に嶺澳原子力発電所2号機(98.4万kW,PWR),7月に秦山Ⅲ期原子力発電所2号機(70万kW,CANDU炉)が運転を開始し,12月末時点で運転中の発電所は8基624万kWである。2004年には秦山Ⅱ期原子力発電所2号機,田湾原子力発電所1号機が,また2005年には田湾原子力発電所2号機の運転開始が予定されており,現在建設中のものは2005年までに全て完成する予定である。

 2003年に公表された中国国家発展・改革委員会の電力発展原則によると,“水力発電の積極開発”,“石炭火力発電等の積極開発”に続く項目として,“原子力発電の積極開発”が挙げられ,十・五計画当初の“適度に開発”から“積極的に開発”へとスタンスを大きく変えている。次期新設着工サイトとして,浙江省に2基,広東省に2基が国務院の認可待ちと言われている。また,国家発展・改革委員会は2020年の原子力発電規模を3,200万kW(全発電設備容量の4%)と数値を提示し,国防科学技術工業委員会は「2020年までに国際的な先進水準の原子力発電所を自主設計,建造する」との方針を示した。

2) 送電網の整備

 電力系統の安定化と融通力を強化するために,国家電網公司は2月「西電東送,南北互供,全国連網」を基幹とする2020年までの全国連系スケジュールを発表した。ここでは,三峡工程を核心とした四方への放射状系統の構築と,縦方向の連系の強化による広域融通・連系と地域間融通・連系が示されており,2005年までの目標として西電東送の融通電力規模を2,000万kWに,地域大電力網間の電力融通能力を1,500万kWと掲げている。具体的には,2003年着工分としては華中―華北連系,西北―華中BTB連系の変換所基礎,東北―華北連系強化,山東―華北連系の工程が,またF/S業務のスタート・完成分として華中―華北連系強化,西北―華北連系,華北―華東連系工程が,さらに三峡発電開始に間に合わせる形で華東・広東向け関連送変電工事の建設の完成が挙げられている。

(3)電力需給状況

 国家電網公司が2003年春に発表した電力需給見通しでは,夏の電力需給は逼迫傾向が強まるとし,ピークシフトなどの需要家側の対応とともに,短期で建設可能な電源開発,送電網整備など供給側の対応の必要性を指摘している。

 2003年の需給逼迫は,ピーク時に電力使用制限となった直轄市・省・区が,第一四半期において既に16箇所に上るという状況だった。その主な原因は,低温な気候,渇水による水力発電所の発電出力低下および電力用石炭の供給不足にあった。

 その後夏場に入り,高温日が続く状況になると,電力需要はさらに急増し,8月には19の省・市・区において電力供給制限が行われることとなった。特に華東地区において逼迫度合いは著しく,産業用電力を対象に,時間帯別料金,土日操業への切り替え,ピーク時の需要家設備点検等によりピークシフト・カットが実施された。

 夏場のピークを乗り越えた以後も,依然需給逼迫の状況は変わらず,12月においても7省において供給制限が継続したが,この主要因としては,長期に亘り最大出力運転を続けてきた多数の発電設備の保守・点検時期が重なったことが挙げられる。

 これらの需給アンバランスが生じた根本的な原因について,電力監督管理委員会は,①1990年代後半の発・送電設備建設計画の後送り,②電力過剰時に誘致した電力多消費企業の需要増,③国民の生活水準の上昇による民生用需要増,④天候条件(異常高温,渇水)などを挙げている。

 電力企業連合会発表によれば,2003年に何らかの形で電力供給制限を実施した省・市・区は22である。

(4)体制改革

 2002年末に発電送電の完全分離を目指し,電力体制改革が行われた。国家電力公司は,5発電公司,2電網公司(国家電網公司は5つの地域電網公司で編成),4補助事業公司に分割され,中央の行政機関として,「国家電力監督管理委員会」が設置されることとなった。

 5大発電公司への設備移管は財務・人事労務を残して2003年3月までに全て終了しており,移管に関わる発電資産容量は1億6,273万kWとなった。電網公司には揚水発電所およびピーク・周波数調整用発電所の管理は認められ,その容量は国家電網公司1,968万kW,南方電力網公司372万kWである。また,国家電網公司が暫時保留して2年以内に売り出す発電資産は647万kWである。

 電網公司の再編では,2002年末に上記のように地域に分けて運用することが決定し,2003年11月までには実質的運用公司である華東,東北,華中,西北,華北電網有限責任公司が正式に設立した。これにより,南方を除く北・中部の系統は5つの地域電力網公司により運営されることとなった。さらに東北地区では,2003年に実験的に実施していた電力市場の対象範囲を東北3省に広め,2004年1月から正式に地域電力市場の運営が始まっている。

 2003年3月には国家電力監督管理委員会が正式に発足し,その職能が公布され,主要職責が明らかとなった(電力監督管理における体系を構築,法律・法規の制定を提案し,電力市場運営,電力技術,電気料金,企業活動などの監督を行う)。当委員会は中国初の基礎産業領域における事業監督管理機構であり,これにより,中国電気事業は階層構造の刷新と制度刷新において実質的な一歩を踏み出したと言える。

(5)2004年の見通し

 2004年の消費電力量は20,720~21,290億kWh(対前年比+10~13%),2004年末の総発電設備容量は約4.23億kW (同 +10%前後)と想定されている。

 2004年以降,需給逼迫状況は数年継続するが,特に2004年は2003年よりも需給逼迫の度合いは増加,2,000MW相当の供給不足が予測されている。2004年内には約3,800万kWの発電設備が運転を開始する計画だが,その2/3が下期の運開予定であり,夏季ピーク時には間に合わない。さらに,発電用石炭の供給不安定性,渇水による水力発電量低下,また送電線建設遅れによる送電ネックの問題等が依然継続していることが,逼迫度合いを増す要因となっている。

 地区毎の想定では,華東地区は電力供給不足の規模が増大,華中地区は電力不足の時間帯が増加,華北地区はより逼迫,南方地区は電力不足の規模が増大,西北地区は電力需給が均衡,東北は引き続き供給余力が存在するとされている。

 石炭価格の上昇等のコスト高を背景に電力料金水準の値上げ圧力が高まることも予想される。

<2003年の需給逼迫状況>

地区

2003年1~9月の状況

区域の特徴、省市区別の

電力供給制限の規模等

(注1)

ピーク需要

(万kW)

(注1)

発電電力量の対前年伸び(注2)

華北

(北京、天津、河北、山西、

内蒙古(西部)、山東)

3,985

(※山東除き)

対前年同期比

 

+9.1%

 

 

 

 

+12.7%

北京、天津等は電力需要が安定。河北、山西、内蒙古はひっ迫。山東は、需要が増加しているが供給力に余裕。

【1日当たりの最大供給制限規模(万kW)】

河北116、山西150、内蒙古7

東 北

(遼寧、吉林、黒龍江、内蒙古(東部))

2,539

 

同比 +15.4%

 

 

+15.5%

需要が増加しているが供給力に余裕。

華 東

 

(上海、浙江、江蘇、安徽、福建)

5,689

(※福建除き)

 

同比 +14.1%

 

 

+18.1%

高温日の連続、渇水の影響から電力不足。

【1日当たりの最大供給制限規模(万kW)】

上海194、江蘇240、浙江548、安徽56、福建221

華 中

 

(江西、河南、

湖北、湖南、

重慶、四川)

3,455

 

 

 

同比 +11.9%

 

 

 

 

+15.8%

高温日の連続、渇水の影響から河南、湖北、湖南でひっ迫、四川、重慶でも供給制限。

【1日当たりの最大供給制限規模(万kW)】

河南159、湖北33、湖南100、

四川49、重慶20

西 北

 

(陝西、甘粛、

青海、寧夏、

新疆)

1,455

 

 

同比 +17.9%

 

 

 

+14.7%

基本的に、年最大は冬季(1~3月)。陝西は供給余力あり。甘粛は安定。青海、寧夏はひっ迫。

【1日当たりの最大供給制限規模(万kW)】

青海55、寧夏47

南 方

 

(広東、広西、

海南、貴州、

雲南)

3,953

 

 

同比 +27.2%

 

 

 

+13.5%

広東はひっ迫。特に東莞、深センでは深刻。貴州、雲南は、ひっ迫。広西、海南は安定。

【1日当たりの最大供給制限規模(万kW)】

広東41、雲南43、貴州17

(注1)電監会発表(2003.11)(注2)「中国電力」(国電信息中刊行)の発電電力実績

 

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