第1章エネルギー

4.天然ガス

 石油の消費量が拡大し続ける中国は、天然ガスの利用を促進せざるを得ない事情があり、消費拡大のために大型の投資を進めてきた。1990年には一次エネルギー消費の2.1%を占めていた天然ガスは、2001年でも2.5%にすぎなかったが、利用設備の完成とともに比率が上がり、2003年には3%弱に達した模様である。グリーンオリンピックを標榜することによって、環境改善を進める手段としても天然ガスの利用を促進する計画であり、2010年には10%に達すると見込まれている。

(1)多様で比較的豊富なガス資源

①中国の在来型天然ガス資源

 中国の天然ガスの埋蔵量は比較的豊富である。推定される天然ガスの究極原始埋蔵量は38兆m3で、この数値がその後の経済計画策定などの基本とされている。国家発展改革委員会能源研究所による地域ごとの数値を表1に示す。

文本框: 表1 中国の地区別天然ガス究極原始埋蔵量  	          単位:兆m3)  地  区	究極原始埋蔵量  陸 上	西部地区	タリム盆地	8.4  		四川盆地	7.2  		陜甘寧盆地	4.2  		チャイダム盆地	1.1  		その他	1.5  	東部地区	7.5  海  上	6.1  合  計	38.0  出典:国家発展・改革委員会能源研究所
  天然ガス資源は主に西部地域に集中しており、2001年末現在、天然ガスの確認可採埋蔵量は計2兆5,000億m3を超えることが明らかにされており、「西気東輸」パイプラインなどに供給するための180億m3/年の生産体制が整ったとされる。

 中国専門家によれば、2010年までに、中国西部地区では、3兆4,500億m3の天然ガス可採埋蔵量が確認され、500億m3の年産体制を整えることができ、その半分は東部地区に運ばれると予測されている。

②炭層メタンガス

 中国では在来型のガス田ガスや石油生産に伴われる随伴ガス以外のガス源が意外に多い。中国は世界最大の石炭産出国であり、国内の炭鉱から排出・生産される炭層メタンガスの量は膨大である。

 CMGは、中国産炭地において、わずかに利用されているが、ほとんどは空中放散されているのが現状である。中国政府は小規模・零細炭鉱の閉山を促進し、生産効率を高め、安全性の向上を図っているが、2003年1~6月期の炭鉱事故による死者は約2,800名で、史上最大規模となっている。事故原因の多くは、ガス爆発で、今後炭層のガス抜きによるCMGの生産はますます増大すると思われる。

 中国政府は、固体石炭の燃焼による煤煙、SOxの発生を軽減するため、また二酸化炭素に比べ温暖化効果が20~30倍と言われるメタンの排出抑制の方策として、各炭鉱企業に対し、CMGの有効利用を指示するとともに、外国企業の協力を得て、第10次五ヵ年計画期にCBMの探査・開発に注力し、2005年には生産量を100億m3にする計画である。

(2)パイプライン・プロジェクト

 天然ガス事業は、生産地(ガス田)と消費地を結びつけるパイプライン事業が大きなカギを握る。中国のパイプライン建設は、土地取得のための手続きが不要なこと、保安基準が比較的ゆるいことなどから、その敷設速度は「ひと月100キロ、1年1,000キロ」と言っても過言ではない。ガス生産地と消費地の連携は予測以上に速く進展するものと思われ、中国政府は2005年前後には、華中、華東と華南地区のすべての大中都市で、国産天然ガスと輸入LNGを使えるようにするとしている。

 過去5年間、中国では靖辺(長慶ガス田)-北京、靖辺-西安、靖辺-銀川、ツァイダム-蘭州、吐哈ガス田-ウルムチの5本の長距離ガス・パイプライン、全長2,930kmが相継いで完成し、これによって西部地区のいくつかの主要都市が「ガス化」されてきた。政府はさらに、パイプライン沿線の都市で30余りのガス利用重点プロジェクトを推進している。現在、西部地区のウルムチ、コルラ(庫爾勒)、ゴルムド(格爾木)、銀川、楡林と彰州などで天然ガス化学工業基地建設計画を進めている。

①「西気東輸」プロジェクト

 第1期工事である東部区間(オルドス長慶ガス田-上海市)の開通は2003年10月の「国慶節」期間中であった。

 この西気東輸パイプライン幹線は西の新疆タリム盆地輪南油・ガス田から、甘粛、寧夏、陝西、山西、河南、安徽、江蘇、浙江の各省を経て、最終的に中国東部上海市郊外の自鶴鎮に至るものである。

 同プロジェクトは、タリム盆地北部のガス田、オルドス盆地の長慶ガス田および周辺のガス田(スリガ・ガス田など)を供給源として、上海および周辺の華東デルタ地帯の消費地を結ぶもので、全長4,200km、配管口径1,118mm、鋼板厚14.6mm、当初輸送能力120億m3/年、将来は200億m3/年に増強するというものである。パイプラインへの投資額は495億元、上流から下流までの総投資額は1,600億元(約180億ドル)と言われている。

②順調に進む中国内パイプライン網建設

 パイプライン建設、計画の概況を図1に示す。

(3)LNG輸入プロジェクト

 沿岸部の旺盛な天然ガス需要に対応すべくCNOOCは、広東省大鵬湾および福建省嵩嶼   において、LNG輸入基地建設を進めている。広東LNGプロジェクト向けにShellを主要シェアホルダーとするオーストラリアNWS LNGと、福建LNG向けにはBPを主要シェアホルダーとするTangguh LNGプロジェクト各社との売買契約に調印している。同LNG輸入プロジェクトは順調にターミナル建設、周辺ユーザーへのパイプライン建設工事が進捗している。

 両プロジェクトの概要を表2に示す。

表2 広東・福建LNGプロジェクトの概要

 

広 東

福 建

ターミナル建設地

広東省深セン市

福建省アモイ(廈門)市嵩嶼

参加企業及び権益

中国(64%):中国海洋石油総公司  (CNOOC)(33%)、侮框投資公司(14%)、広東電力公司(6%)、広州ガス公司(6%)ほか

香港(6%):

Hong Kong Electric Holdings(3%),

Hong Kong & China Gas(3%)

外国(30%):BP 30%

CNOOC60%、福建中閩公司40%

LNG輸入ターミナル

第1期で2005年までに年間370万トン第2期2005~2010年で同500万トン

第1期で2007年初頭までに年間250万トン

第2期で同500万トンに拡張

LNG供給契約

2005年から25年間にわたり、年癇325万トンをオーストラリア北西大陸棚ALNGから供給

2007年から25年間にわたり、年間260万トンをインドネシア・パプア州のTangguhLNGから供給

パイプライン

第1期としてトランクライン:215.4kmブランチライン:32.6km及び78.8kmを建設。輸送量は年間40億㎥

第2期としてトランクライン181.7kmを建設し、南シナ海天然ガスとリンクさせ、年間82億㎥(LNG:67億㎥)/年、南シナ海天然ガス15億㎥)を輸送

20億元投下。CNOOCが60%、福建中間公司が40%を出資。

都市ガス供給

第1期として、侮框、広州、佛山、東莞、

に供給。(香港への供給(50~100万t/年)を検討)

第2期として、上記4都市に追加して、恵州、珠海、江門、中山、肇慶に供給。

5カ所で都市ガス供給。福州、フ田、泉州、廈門、ショウ州で天然ガス供給グリッド建設。CNOOCが10~25%の株式を保有

火力発電所

恵州1カ所・侮框西部基地周辺2カ所に建設予定。各発電所に発電機3基を設置、総出力はそれぞれ100万kWの予定

南埼天然ガス発電所、嵩嶋天然ガス発電所の180万kW・2基150億元を投下。

投資額

第1期:51億元

第2期:21億元

(いずれも発電所・都市配管網建設は含まず)

ターミナル:43億3,000万元

パイプライン:20億元

発電所:150億元

出典:E&W Report、CNOOC Webより作成

 

 また、両プロジェクトに引き続くLNG輸入構想が、上海市、江蘇省、山東省青島市などでとりざたされている。

 上海市および江蘇省の計画は、PetroChinaが主体となり、それぞれの地方政府との間で、趣意書を調印している。山東省では、CNOOCが事業主体となり、山東省政府との間でプレF/S作業を実施している。しかし、建設が予定されている青島市黄島地区の石油化学コンビナート建設やこれまでの青島市への天然ガスの供給ではSinopecが主導権を握っており、今後、具体化した段階で、Sinopecの事業参画も考えられる。

 東北三省のガス需要の増加とコヴィクタからのパイプラインの建設遅延によっては、大連周辺でのLNG輸入基地建設が具体化する可能性もある。

(4)ガスビジネス参入への今後の展望

①ガス価格

 中国の天然ガス価格は、政府(国家発展・改革委員会)が地域ごと、パイプラインごとに決定している。一次エネルギー消費の大半を占める石炭と石油が、それぞれ1993年、1998年から価格規定が順次撤廃されてきているのとは対照的である。

 また、社会主義の大儀から電気料金と同様、大口需要家に対して高く、一般民生用が安く設定されている(例えば、広州市の産業用都市ガス(SNG)3.2元/m3で供給されている)。北京市の民生用ガス価格は、1.9元(約28円)/m3、広州市の民生用ガス(SNG)価格は、2.2元(約33円)/m3となっている。この価格はイギリス、米国と比べればはるかに高く、日本(100円前後)の3分の1以下であるが、購買力平価では、日本の2倍以上となる。産業用にあっては、日本国内の供給価格を上回る場合もある。

 広東LNGのCIF価格は、公表されていないもののオーストラリアALNGの生産・輸送コストが$1.7~2.4/MMBTUであることから、これを若干上回る水準であると考えられる。気化費、パイプラインコストを加えた広州市のLNGからの民生用ガス価格は2.7~3.1元(約40~46円)/m3になるといわれる。前述のとおり、国内産ガス価格も極めて高く、「西気東輸」プロジェクトの最終消費地である上海市のシティゲート価格は、1.35元(約20円)/m3となっている。今後のガス市場開拓についても、こうした事情から未知数の部分が大きいが、諸外国なみに産業用と民生用の価格調整や政府による助成措置が発動されれば市場は拡大すると思われる。

②天然ガス開発

 外資に開放されつつある中国内陸のガス田開発は、比較的規模が大きく、技術的にも困難が予想されるものである。西気東輸プロジェクトの条件等を考慮すると、未開発ガス田の開発への参入のためには、ガス田開発に伴うパイプラインやガス貯蔵設備への投資、あるいは中国側の開発資金調達への協力等を行う必要が出てくるものと考えられる。投資も数十億ドル規模であり、メジャーを除いては、その参入は困難であると考えられる。

 一方、小規模ガスユーティライズシステムと組み合わせたガス利用-ガス探鉱・開発は、投下資金が比較的小額ですむこと、既発見のガス源があることから、日本のエネルギー企業でも取り組みやすい案件が発掘できる。未開発ガス田のガス開発を行い、GTL、DMEに加工する、CDMと組み合わせることにより経済性を高めてCBM、CMGの開発を行うことなどが考えられる。とくに四川省では、既発見・未開発ガス田が数多く存在する。現在、四川省内の化学肥料産業等の保護のため、ガス価格が低く(0.4~0.6元(6~9円)/m3)に抑えられているが、忠武パイプラインの完成によって、省外の消費地と結ばれたあかつきには、「西気東輸」パイプラインによる供給ガス価格に近づくと思われ、四川省内のガス田の資産価値が大きく上昇することとなる。

③パイプライン輸送

 中流事業として最大のものは、前述のとおりパイプライン事業である。これも大規模投資を必要とし、「西気東輸」パイプライン事業では、前述のとおり参入外資は限られている。

 パイプライン網整備に伴い、沿線とくに「西気東輸」パイプライン沿線地域の都市ガス配管事業が急拡大しており、とくに香港系の企業の参入が相次いでいる。

 「西気東輸」パイプラインに使用するラインシーム鋼管の8割は輸入品が使用されたと言われ、日系鉄鋼メーカーからの供給が増加した。

 ガス田開発事業に参入する場合は、パイプラインやポンプステーション等の中流インフラ設備の技術を有する鉄鋼会社やエンジニアリング会社とともに、高度な独自技術を背景として、国際協力銀行(JBIC)の資源開発ローン利用等、日本の総合的な技術力・資金力を使っていく必要がある。

④利用分野

 天然ガスの液体燃料化については、小型LNGプラント、直接法によるDME製造技術など、日系企業の活躍する場面は今後ますます増えると予想される。

 ガスのユーティライズで最大のものはガス発電である。華東デルタ地帯は電力不足がとくに深刻で、7~9月の冷房による最大需要期には、計画停電が予定されている。電力不足の原因は、需要の急激な伸び、新規発電所の不足、石炭価格の高騰、水不足による水力発電の能力低下、送電網が不十分であることがあげられる。環境問題から、小型の石炭火力発電所がつぎつぎに廃止されていることも遠因となっている。こうしたことから、表9のとおり、ガス発電所建設計画は目白押しの状況である。

 日系企業は、ガスタービンの納入などで実績を積んでいる。今後、発電事業とガス源開発を組み合わせた参入方式などを考慮すべきである。

 前述のとおり中国の天然ガス価格は、LNGの国際価格並みで、石炭に比べて極めて高く、天然ガスの市場競争力は弱い。しかし、北京市は2008年のオリンピック開催、上海市は2010年万国博覧会開催に向け、天然ガスの消費を増やし石炭消費量を抑制し、エネルギーの消費構造の改革や大気汚染解消を図る計画である。

 今後、行政が環境改善とエネルギー転換の意義を認め、ガス価格体系の見直しや天然ガス関連企業への優遇税制の実施、石炭火力発電所への脱硫装置の設置義務付け強化などの施策を実施することにより、天然ガスに価格競争力が生まれ、中国の天然ガス事業はますます大きく発展する可能性がある。

表3 中国の主要ガス発電所建設計画

地域

発電プラント

出力・基数

供給源

(パイプライン)

/供給量

備考

北京

京豊発電所

30万kW・1基

長北ガス田

(陝西省)-(陝京)

三菱重工がタービン供給

山東

青島発電所

ピーク

セービング用

中原油田

(済南-青島)/

SinopecCorpと山東省政府が合意

青海

格爾木発電所

30万kW・1基

澀北ガス田

(澀寧蘭)/

 

甘粛

蘭州発電所

30万kW・2基

澀北ガス田(澀寧蘭)/12億㎥/年

HongKongMeiyaPoweCoが65%出資、GEがタービン供給

甘粛

蘭州西固発電所

20万kW・2基

澀北ガス田(澀寧蘭)/4.7億㎥/年

投資額は17.4億減、05年末完成予定

河南

鄭州発電所

37.9万kW・2基

(西気東輸)

/5.1億㎥/年

ExxonEnorgyと河南省電力公司が出資。投資額は24.6億元。発電量は26億kWh/年

江蘇

望亭発電所

39万kW・2基

(西気東輸)

/4.6億㎥/年

投資額は25億元、GEがタービン供給、06年完成

江蘇

張家港華宇

発電所

39万kW・2基

(西気東輸)

/4.6億㎥/年

投資額は25億元、GEがタービン供給、06年完成

江蘇

戚墅堰発電所

39万kW・2基

(西気東輸)

/4.6億㎥/年

投資額は29億元、GEがタービン供給

江蘇

南京発電所

30万kW・2基

(西気東輸)

/4.6億㎥/年

建設費29億元、南京熱電廠建設

江蘇

華能金陵発電所

30万kW・3基

(西気東輸)

/7.5億㎥/年

華能65%、江蘇省30%、南京市15%出資。建設費37億元

江蘇

揚子石化巴斯夫

南京発電所

17.5万kW

(西気東輸)/

揚子石化と独BASFの石化コンプレックス内に設置。機器はGEPowerSystems

上海

漕JING化学

工業区発電所

30万kW・2基

(西気東輸)

/10.8億㎥/年

建設費26億7,000万元、GEがタービン供給

上海

華能石洞口

発電所第2期

30万kW・3基

(西気東輸)

/7.3億㎥/年

建設費37億元、申能股分30%、華能国際70%

上海

閘北発電所

40万kW・2基

(西気東輸)

/3,000万㎥/年

建設費13億元、石油からのガス転換・拡張計画

浙江

杭州半山発電所

30万kW・3基

(西気東輸)

/7.4億㎥/年

投資額は40億元、省電力公司が64%、省電力開発公司が36%を出資、GEがタービン供給。発電量は39億kW/年

浙江

蕭山発電所

30万kW・2基

(西気東輸)

/5.5億㎥/年

浙江東南発電股分有限公司が26億元投資 発電量は26億kWh/年

浙江

鎮海発電所

30万kW・2基

(西気東輸)

/5.5億㎥/年

投資額は26億元、発電量は26億kWh/年 05、06年にそれぞれ発電機1基が稼動する

湖北

武昌発電所

7万kW・2基

(武忠)

/1.6億㎥/年

投資額は7億元、発電量は6.3億kWh/年

福建

南埔発電所

180万kW

福建LNG/

投資額は76億元、CNOOCと福建省政府が合意

福建

嵩嶼発電所

120万kW

福建LNG/

投資額は40~50億元、CNOOCと福建省政府が合意

広東

恵州発電所

35万kW・3基

広東LNG/

投資額は85億元、1期完成は06年、2期完成の総出力は200万kW。三菱重工がタービン供給

広東

深セン東部

発電所

35万kW・3基

広東LNG/

香港Hopewellなど資本参加、三菱重工がタービン供給

広東

深セン前湾

発電所

35万kW・3基

広東LNG/

三菱重工がタービン供給

広東

珠江発電所

35万kW・2基

広東LNG/

 

広東

深セン美視

発電所B廠

35万kW・1基

広東LNG/

天然ガス転換

広西

欽州発電所

15.5万kW

東方ガス田・

楽東ガス田/

投資は、UniqueFarEast

Development、広西電力有限公司、広西開発投資有限責任公司

 

海南

洋浦発電所

36万kW

東方1-1ガス田

(東方-洋浦)

/7億㎥

省電力公司とCNOOCが共同出資、ガス燃料への転換。Siemensが受注。発電量は17億kWh/年

情報源:E&W Report、ChinaWaveより編集

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