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1.セメント (1)中国セメント産業の概要
2003年の中国のセメント生産量は8.13億トンであった。世界のセメント生産量は約17億トンなので、中国はその約半分を占め、日本(約74百万トン)を大きく引き離し世界第1位である。
90年代前半には毎年、独、伊、仏などのヨーロッパ主要生産国1国の年生産量以上に相当する50百万トン前後ずつ拡大を続け、96年から数年間は拡大のスピードが一時鈍化したが、2001年からは再度生産量が拡大しつつある。
<中国のセメント生産量> (単位:百万トン)
あ 年度 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
背 生産量 |
476 |
491 |
513 |
536 |
573 |
583 |
627 |
725 |
813 |
(出所:セメント協会他)
セメント産業は装置産業なので、スケールメリットを追求するのが一般的であるが、中国のセメント業界には多数のメーカーが乱立しており、ここ数年減少傾向にあるものの、未だに約4,831社が存在し、日本の1工場当りの平均年産量が250万トン程度であるのに対し、中国の1工場当りの平均年産量は約17万トンと、小規模工場の多さが中国セメント業界の特徴である。
セメントは石灰石などの原料を細かく粉砕し、キルンと呼ばれる窯で焼いて(焼成)、クリンカと言う中間製品を作り、石膏を混ぜて再度粉砕してできあがる。中国のセメント生産を焼成方法で分類すると、70%が立窯、30%が回転窯によるものである。回転窯による焼成が低コストによる大量生産を可能にするのに対し、立窯による焼成では、せいぜい年産数万トン程度が普通であり、少量生産ゆえに高コストであり、また製品の品質も悪い。更に、環境保全面でも充分な設備を有しているとは言い難く、特に粉塵問題は深刻である。
上記の如く、中国のセメント生産様式は先進国から未だに立ち遅れた状況にある。
更に、流通面での近代化も大きな課題である。セメントの流通形態は「袋」と「バラ」に分類できる。「袋」とはその名の通り、セメント袋に入れて販売することを意味し、「バラ」とは、セメント袋に入れず紛体のまま、バラセメント車などで顧客に販売することを意味する。日本のセメント流通形態は9割以上がバラである。
バラであれば大量輸送が可能であり、流通コストを低く押さえられる。ところが中国では、未だに約70%が袋で販売されており、バラでの販売は30%前後に過ぎない。また、中国でセメント袋に使用される紙は膨大な量にのぼっており、紙資源の枯渇防止の観点からもバラ化の促進が望まれる。
バラ化の程度は、地域によって大きな差がある。2003年の実績では、最もバラ化が進んでいる上海市、天津市のバラ化率がそれぞれ94%、90%と、ほぼ日本並みに達しつつあるのに対し、北京市は74%、浙江省53%、江蘇省45%、東北地区は25%程度であり、全国平均でも未だに30%に留まっている。中国政府はバラ化率の目標を、2010年に40%、2020年に60%と設定し、バラ化を促進している。
そのバラ化促進策の一つが生コン工場の普及である。セメントに水、砂、砂利を混ぜると生コンになる。生コン工場にはバラセメント貯蔵用のサイロがあるので、バラでの輸送が可能となる。つまり、生コン工場が増えれば、自動的にバラ化が進展するわけである。
既に沿海部の主要都市では相当数の生コン工場が稼動しており、上海等の一部地域では供給能力過剰に伴なう工場淘汰も既に始まっている。
但し中国全土でみれば、生コン工場の普及はまだ不十分であり、生コン工場の普及を図るため、中国政府は、北京市等の124の都市は2003年12月31日から、他の省(自治区)所轄市は2005年12月31日から、生コン現場練りを禁止する通達を出した。
(2)最近の動向
1998年に国家経済貿易委員会が交付した「建材業界の“総量規制・構造調整”に関する意見」に基づき、建材業界の抜本的な構造改革が着手された。セメント業界における最大のポイントは、「小水泥」と呼ばれる立窯工場など非効率的小規模工場の淘汰である。
「小水泥」の生産能力を、1999年、2000年の2年間で合計1億トン淘汰するという目標が掲げられ、各地で「小水泥」の淘汰リストが公表され、生産停止の措置が取られることになり、1999年は4,000万トンの生産能力を削減、また2000年も4,000万トンを削減した。
2001年以降もこの構造改革は継続され、2002年末までに累計で3,940社が閉鎖され、削減された生産能力累計も約1億トンに達した。
1996年、上海市は、率先して立窯の閉鎖を決定し、続いて北京市も立窯の制限を決定し、オリンピック誘致成功後、2003年までに立窯を全部閉鎖の方針、浙江省では杭州の青空を取り戻し、自然環境を保護するために、立窯の取壊しに2,300万元の補助金を投入する、四川省では、国家及び省内の重点プロジェクト等の使用するコンクリートは立窯セメントを使用してはならない等規制が厳しくなったこと、また立窯は高コストであり、製品の品質が悪いため、立窯では今後、生き残れないとの認識が広まり、立窯の建設は止まった感がある。
セメント産業近代化の動きは生産設備・技術の革新のみならず、セメントの品質規格の見直しにも現れている。2001年4月以前の中国のセメント規格は、圧縮強度によって325、425、525、625等に分類(番号が大きいほど高品質)され、525以上のセメントが全体の2割、425が7割、325以下が1割を占める状況であった。(因みに日本で流通しているセメントは、全て525以上の品質に相当。)
そこで2001年4月から試験方法を国際標準のISOに準拠させ、325以下の低強度セメントを規格外品として市場から淘汰することで、325以下のセメントしか生産できない「小水泥」を閉鎖に追い込もうとしている。尚、新規格では、圧縮強度を一ランク下げた形で分類呼称が変更され、32.5(旧425)、42.5(旧525)、52.5(旧625)等に分類されている。(番号が大きいほど高品質である点は変わらない。)
(3)WTO加盟の影響
セメントは重量物ゆえに運賃負担力が低く、長距離輸送に不向きな商品であるうえ、海外からのセメント受入には専用の受入・保管設備が必要で、一定の投資を伴なう。また、セメントの関税率が8%と比較的低い為、関税引き下げのメリットも少なく、今のところ、セメントの関税引き下げの予定もない。従って、中国のWTO加盟を契機に、セメントの輸入数量が激増した事実はなく、今後も激増する可能性は低い。また、WTO加盟後、外資参入による市場競争激化の結果、国有企業の淘汰が進むと言われているが、セメント業界では、日米欧の主要な国際資本は中国のWTO加盟前に市場参入済みである。更に、一部の大手国営企業は最新鋭設備を導入、技術革新にも積極的であり、品質レベルの向上もあって、国内シェアや輸出の拡大を目指す等、国際資本とも競争可能な水準に達してきている。
こういった状況下、WTO加盟を契機に、建設業界の外資への開放が進み、セメントという素材に対する品質要求が高まることで、間接的ではあるが、中国セメント業界の近代化に効果的な影響を与えることを期待したい。
(4)日本との関係
1989年、小野田セメント(現在の太平洋セメント)が、大連華能小野田水泥有限公司を設立し、中国における最新鋭工場を建設以降、三菱マテリアル、日本セメント(現在の太平洋セメント)、宇部興産等が、1990年代に中国に進出した。
現在、太平洋セメントが秦皇島、大連、及び南京で、三菱マテリアルが煙台で、それぞれセメント工場に出資している。また、宇部興産が広東省で、三菱マテリアルと太平洋セメントが共同で海南島で、それぞれクリンカ粉砕工場に出資している。日本企業は中国のセメント業界への外資参入の草分けであり、中国沿岸部における好立地の生産拠点は、日本企業がほぼ独占している。日本企業は流通拠点の整備にも参入し、太平洋セメントが上海、深セン、北京にセメントターミナルを設立、前記の生産拠点で生産されたセメントを各市場で販売している。更に、太平洋セメント、内山アドバンス等が、上海、北京、南京、深セン、秦皇島等で生コン工場を建設し、セメントのバラ化推進、生コンの普及等、建設業界の近代化にも一役買っている。
(5)2004年の展望
2003年の中国セメント業界は、地域によってバラツキはあるものの、需要増となり、業界全体の利潤総額も前年比48%増加していることから、生産ラインの新増設が相次ぎ、クリンカ生産能力が6千万トン(98ライン)増加し、2004年度も、新規稼働予定の生産ラインが、2.1億トン(240ライン)ある。
2004年のセメント需要は総じて順調な伸びを見せると予想されるが、生産ラインの新増設に見合うだけの「小水泥」の淘汰が進んでおらず、生産能力過剰の状態を脱しきったとは言い切れないこと、更に、石炭業界の構造調整に伴う石炭価格の高止り、急速な経済成長や所得水準向上による電力使用量の急増による電力不足、鉄道輸送能力の不足、トラックの運賃高等コスト面での経営圧迫条件が存在する。
このような状況下、中国政府は、2004年2月、セメント産業政策について、検討案として、
| (1) |
セメント業界の構造改革継続 |
| (2) |
合併吸収による資源再配置・集団化の促進 |
| (3) |
2010年末までに、回転窯(ロータリーNSPキルン)の生産量を全体の50%以上、2020年度末までに80%以上を目標 |
| (4) |
立窯を含む非効率な小規模工場の新設禁止、2,000トン/d以下の回転窯新設禁止、東部地区で閉鎖した陳腐化設備を他地区への移設禁止 |
| (5) |
4,000トン/d以上規模の回転窯新設を促進等を発表した。 |
中国政府並びに建材業界の取り纏め役を努める中国建築材料工業協会の強いリーダーシップによる市場環境の整備促進に期待したい。
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