第5章 輸送機械

1.自動車

 2003年は中国の自動車産業生誕50周年に当たる。起点は1953年7月の長春第一汽車制造廠定礎とされる。国産車第一号は56年に出荷された旧ソ連トラックを模した「解放号」であった。その後、自動車生産の足取りは、71年10万台、80年20万台と緩やかな上昇カーブを描き、92年に100万台のオーダーを達成するまで約20年の歳月を要した。今世紀に入り、相次ぐ外資系合弁企業の拠点設置・本格稼動等を背景として生産量は顕著に増大。’00年は201万台、02年325万台、03年は444万台(前年比35.2%増)の急成長を遂げた(03年販売台数は439万台、同34.2%増)。事実上、中国は生産量で米、日、独に次ぐ世界第4位、販売台数では第3位の自動車生産・販売大国となっている。

 成長目覚しい13億人口の国、中国。市場としての潜在性は計り知れものがある一方、中国の自動車産業をめぐる諸問題は複雑で多岐にわたる。以下、03年における産業をレビューし、その特徴を踏まえた上で課題と04年を展望する。

(1)02年に続き顕著な成長を遂げた03年の自動車産業

  • 数ヶ月に及ぶSARS騒動にもかかわらず中国はGDP9.1%成長を実現。自動車産業は35.2%増とGDPの伸びを上回る成長を遂げた。バス等公共機関内でのSARS感染を恐れて自家用車購入に走った一群が逆に底上げ効果をもたらした可能性も考えられる。10次五ヵ年計画(01-05年)が目指した05年320万台達成は02年に前倒して実現し、自動車史上類を見ない100万台の純増を2年続きで果たした。かくして中国の自動車産業は電力・通信設備、計算機・電子設備、石油・天然ガス、冶金に並ぶ5大支柱産業の一つに数えられるに至った。
  • 自動車生産のうち、乗用車は202万台(前年比83.3%増)で全体の45.4%を占め、全生産増に対する寄与率は79.3%だった。購買の主役は従来の機関・集団中心から個人へ、使途も生産資料から生活・消費品目へと変化。生活水準の向上が特に目覚しい沿岸部を中心に“マイカー”購買者が自動車産業の発展を牽引した。30万元以上の中・高級車も企業経営者や外資系企業勤務者など比較的経済的に余裕のある層により買い支えられている。
  • 交通インフラ整備の進展が自動車産業の発展を直接・間接に促した。03年は100億元が投じられ、道路4万6千㎞、高速道路4,600㎞が新たに整備された(道路総延長約181万㎞、高速道路約29,600㎞)。
  • トラック生産量は123万台、同10.0%増(シェア26.9%)、バス生産量は129.5万台、同11.9%増(シェア27.7%)であった。トラックの相対的低成長は、SARS、過積載取締強化、金融機関の購入貸付審査の厳格化に起因する、との分析がある。
  • 供給側に目を向けると、完成車メーカーは全国27省・市に123社あり、上位10社が生産量の約80%を占めた。年間生産台数1万台以下が95社に上り、うち70社は千台以下である。“3大企業”の第一・上海・東風汽車の合計生産台数は212万9千台で、全体の47.8%を占めた。
  • ブランドの観点から見ると、乗用車では中華や奇瑞等、トラックでは解放、東風、紅岩等を除き、海外ブランドが大半を占めている。主要海外メーカーはほぼ出揃ったとみられる。乗用車では83年に稼動を始めたVW系(一汽・上海)の存在が37%と依然大きいが、シェアは相対的に縮小傾向にある。ハイエンドユーザーを狙い、BMWは沈陽で秋口より3シリーズの合弁KD生産を開始、ベンツも05年以後の北京での合弁稼動で調印した。
  • 競合相手がひしめき合う中、内外メーカーはシェア獲得のため、新モデル投入(約50車種)、研究開発部門の設置・強化、販売拠点拡充、サービス向上、値引き(後述)など、各社各様の販売戦略を展開した。より長期的視座から優秀な人材確保のための教育・養成学校を設置し、総合力を強化する試みも一部外資系企業に見られる。
  • 国産初のスポーツタイプ車が地場企業により市場投入され、若年層を中心に関心を集めた(2ドア「美人豹」、排気量1,500cc、皮革シートGPS付き16.8万元)。
  • 国内異業種による相次ぐ新規参入が目立った動きを見せた。中国自動車産業の平均利潤率は02年が28.5%、03年が20%以上といわれる中、家電業の「AUX」、「美的」、リチウム電池メーカーの「比亜迪」等がパイ分け競争に名乗りを上げた。AUXは7万元の低価格SUV車を売り出し、08年45万台体制を目指す。ちなみに03年はSUV元年と言われ、同ジャンルの販売総数は前年比1.6倍の15万台を記録した。94年は30万台が見込まれている。
  • 特定車種では長期納車待ち、現物は数万元のプレミアがつくほど人気を博したものもあったが、総供給量が急増する中、年半ばには一部車種で在庫圧が高まった。全体の約8割の車種では値引き合戦が前後して繰り広げられた(平均9.05%の値引き)。
  • 値引き傾向の遠因には、WTO加盟後の輸入関税の段階的引き下げがあるが、03年における輸入車の市場シェアは5.1%にとどまり、中国国産車への打撃は現状さほど大きくない、との見方が一般的である。むしろ国産車が低・中級の輸入車を締め出し、輸入車デイーラーの高級車へのシフトを余儀なくした(2.5-3.0リットル、3リットル車の伸びは各217%増、117%増)。シャシーや部品を含む輸入総額は133.9億ドル(前年比71.6%増)で、乗用車輸入は10.3万台(同46.5%増)、日本製SUVが人気を集めた。

 

(2)問題点と課題

①政府は再編作業を通じ、国際競争力を具備した複数企業グループの構築を企図する一方、多数メーカーが分散しており、調整が容易に進展しない。一般に“規模の経済”効果は100万台以上から、といわれる中、小規模メーカーが大多数を占めている。重複投資傾向ともあいまって中・長期的には過剰生産に陥る懸念もある。

②自動車産業を支える部品産業の基盤が脆弱で、ニセモノも横行している。

③自己ブランド・知的所有権確立が叫ばれる一方、地場企業は依然研究開発能力不足。

④権利者利益を損なう懸念のある商品として、他社製プラットフォームを手本に外観上で若干の手直しを施した程度か、もしくは海外市場で販売されている車種の特定部分のデザインを流用したかの様に見受けられる自動車が市場に出回っている。また消費者の誤認を招きかねない規格の標示行為や商標デザイン等が散見される。

⑤他地域で生産された自動車の流通を阻む地方保護主義的傾向がある(03年末、商務部、発展和改革委員会など全9部局は連名で差別的費用徴収や販売・走行制限等による他地域生産車への排他行為を禁じる通達を公布)。

⑥総じて修理・メンテナンスを含むサービス部門の平均水準が低い。

⑦中古車市場の未整備(査定手続・費用等の地域的不統一・非合理性。01年を最後に諸規則が未改訂。制度未整備に付け込む悪徳取引の存在)

⑧特定区分域での排気量・車格等に応じた走行禁止・制限措置(ユーザーの選択自由を

制限し、企業・産業発展に影響)。

⑨ユーロⅢ等排ガス規制強化に先立つガソリン性状改善措置の必要性(現状のままだとマンガン・鉄等成分による触媒目詰まりを引き起こし出力低下等の不具合が出る)、  

⑩エネルギー需要増と環境圧力への対応。今後も8%成長が続くとすると2020年には保有台数が1億台を突破するが、普及率はなお約7%で需要は更に拡大する。

⑪急速な発展に伴う副作用として、交通事故が増大(03年1~11月期61.7万件、死者9.5万人、負傷者45.7万人、直接的経済損失31.1億元)。

⑫年内には94年以来10年ぶりに「自動車産業政策」が新たに公布される見通しであるが、同一販売店での国産車・輸入車の併売禁止や外資1社グループ当たり合弁先社数上限の設定など、主として外資の発展に不利な条項が盛り込まれる懸念がいわれている。また、内資・外資を問わず、メーカーや販売会社に不合理と思えるコスト増を強要する自動車関連の“3包規定”(修理・交換・返品保証)等も実施要領・時期とあわせ、その行方が注視される。

(3)04年は“大競争時代”の幕開け  

 引き続き乗用車を中心に堅調な伸びが見込まれる。「2010年までの布陣如何で中国での勝負が決まる」との見方がある中、欧米韓はじめ多数メーカーが増産体制に入る。全50車種程度が今年市場に投入される。供給は更に増大し、低・中級車とも価格下落で競争が激化しよう。一部調査によると消費者のチョイス基準は、ブランドより「車両価格・デザイン」、「メンテ費用や部品の安さ」といった結果もある。中国人ニーズに合致した車種をタイムリーにリリースするメーカーが売り上げを伸ばすであろう。なお、SUVは日本車が好評を博すが、既に国内20数社が製造を手がけており、ごく短期間に激戦区となる可能性がある。燃費の良さは、中長期に見ても今後デイーゼル仕様やハイブリッド等を含め、ひとつのカギを握るものとみられる。複数メーカーが今年、デイーゼル車種を初リリースする。 

 中国自動車工業協会は、今年の生産台数を510万~534万台(前年比14.9%~20.3%増)を見込んでいる。なお、輸入関税は1月1日より排気量3㍑以上は43%→37.6%に、3㍑以下は38.2%→34.2%に調整される。輸入車価格は10%程度の下落が見込まれている。

<2003年の主要自動車メーカー生産量と販売量>

単位:台

 

生  産

販  売

1~12月

前年比増減(%)

シェア(%)

1~12月

前年比増減(%)

シェア(%)

1

第一汽車

858,737

30.3

19.3

854,356

28.8

19.5

2

上海汽車

796,969

47.2

17.9

782,036

39.7

17.8

3

東風汽車

473,012

13.0

10.6

469,208

12.9

10.7

4

長安汽車

406,861

23.7

9.2

410,745

33.5

9.4

5

北京汽車

347,947

92.8

7.8

336,657

86.5

7.7

6

哈汽車

200,007

15.6

4.5

190,585

8.9

4.3

7

金杯汽車

124,438

45.5

2.8

118,869

40.7

2.7

8

広州汽車

122,568

90.1

2.8

122,608

90.2

2.8

9

昌河汽車

118,721

Δ23.4

2.7

130,618

Δ13.0

3.0

10

奇瑞汽車

101,141

100.7

2.3

90,367

80.2

2.1

11

南京汽車

99,469

18.5

2.2

100,282

20.0

2.3

12

安徽汽車

93,646

22.6

2.1

94,478

25.1

2.2

13

東南汽車

86,655

82.4

2.0

83,535

77.5

1.9

14

江鈴汽車

63,169

22.9

1.4

61,374

19.4

1.4

15

保定汽車

59,283

n.a.

1.3

58,603

n.a.

1.3

16

海南汽車

42,381

302.8

1.0

42,387

289.1

1.0

17

その他

448,682

25.0

10.1

444,096

24.9

10.1

 

総 量

4,443,686

 

100

4,390,806

 

100

資料出所:汽車網

日本自動車工業会(JAMA)北京事務所まとめ

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