第8章 運輸

3.空運
(1)はじめに

 2003年の航空業界は、SARSに関し、他産業に比して、最も顕著に影響を受けたと総括することができると思われる。本稿では、その影響等を踏まえ、至近の中国航空業界の状況を主として業績面からレビューするとともに、中国の航空輸送における全般的な今後の見通しと課題について概観し、最後に日中間航空輸送の至近の動向について簡単に触れることとする。

(2)2002年(1-12月期)の中国航空業界の状況

 2002年の中国航空業界は、経済成長に連動し、大きく売上高を伸ばした。特に、ビッグ3(中国国際航空(CA)、南方航空(CZ)、東方航空(MU)に続く、海南航空(HU)は、売上高対前年比54.49%増、純利益同80.6%増という脅威的な成長を遂げるとともに、設備投資(2003年に16機の新型機材の導入を計画)にも積極的であった。

 業界全体でも年率2桁以上の成長を継続しており、成長の勢いを見せつける結果となったといえる。

図1)中国航空3社の売上高推移

CHINA COMPANY DATA BOOK 2003-2004等による

(3)2003年上期(1-6月期)の中国航空業界の状況

 2003年の第1四半期は、好調なスタートを切った中国航空業界であったが、第2四半期に、SARSにより、各社とも大きなダメージを受けた。

 特に、中国の大型連休である労働節(5/1-5/6)の期間の航空各社の影響は甚大であり、業界全体で前年同期対比で旅客輸送人数が80%超も減少するなど深刻な影響を受けた。

運航総便数(便)

前年同期比

旅客輸送量(万人)

前年同期比

6,070

‐61.1%

344,000

‐81.2%

表1)中国民間航空全体の輸送実績(5.1~5.6)

中国新聞網(2003/05/13)による

 路線別には、キャセイ航空(CX)のデビット・ターンブルCEOが「これまで26年間キャセイ航空に携わっているが、これほどの危機は初めてだ」と記者会見で発言した通り、香港線が約9割も旅客数が減少するなどその傾向が顕著であったことが伺える。

国際線

国内線

香港・マカオ線

運航便数

旅客輸送量

運航便数

旅客輸送量

運航便数

旅客輸送量

‐53.9%

‐80.6%

‐69.7%

‐84.5%

‐80.6%

‐88.1%

表2)中国民間航空全体の路線別輸送実績(5.1~5.6)

中国新聞網(2003/05/13)による

(4)2003年通期(1-12月期)の中国航空業界の状況

 5月23日広東省をはじめとして、6月24日に北京市においてもWHOによる「渡航延期勧告」の解除、「SARS感染地域リスト」からの除外等の措置が講じられ、全般的にSARSが終息すると、中国の航空業界は、国内線市場を中心に7月より取扱量が回復することとなる。

 表3-① 03年全国空港旅客取扱量

 

旅客取扱量

前年比

総取扱量

17,432.5万人

+1.9%

 

国内線

国内線計

15,842.4万人

+4.5%

香港・マカオ線

596.0万人

-23.1%

国際線

1,590.1万人

-19.6%

 

表3-② 03年全国空港貨物取扱量

 

貨物取扱量

前年比

総取扱量

451.7万㌧

+12.4%

 

国内線

国内線計

313.4万㌧

+ 7.2%

香港・マカオ線

22.9万㌧

+27.2%

国際線

138.4万㌧

+26.5%

 

表3-③ 03年全国空港離着陸回数

 

離着陸回数

前年対比

総 数

211.9万回

+0.4%

貨客便離着陸回数

193.2万回

+0.9%

 

国内線

国内線計

177.6万回

+ 4.6%

香港・マカオ線

5.8万回

-13.4%

国際線

15.6万回

+4.0%

表3-④ 03年取扱実績シェア状況(旅客)

空  港

シェア

全  体

126カ所

取扱量100万人以上の空港

33カ所

(31カ所)

91.3%

(89.8%)

北京、上海、広州

4カ所

36.7%

(39.6%)

(下段は2002年の実績)

表3-⑤ 03年取扱実績シェア状況(旅客)

空港

シェア

全  体

126カ所

取扱量5千㌧以上の空港

43カ所

(〃)

99.0%

(98.9%)

取扱量1万㌧以上の空港

38カ所

(35カ所)

98.3%

(97.2%)

北京、上海、広州

4カ所

55.7%

(54.8%)

(下段は2002年の実績)

表3-⑥ 03年空港使用開始・閉鎖状況

 

種  別

空港名

使用

開始

新規開港:3カ所

四川省九寨溝&攀枝花、内蒙古自治区烏海

使用再開:3カ所

遼寧省朝陽、山西省長治、新疆自治区チモ

閉鎖

軍の連合航空の運航停止による閉鎖:11カ所

広東省仏山&惠州、甘粛省鼎新、遼寧省鞍山、江西省九江、湖北省光化、山東省済寧、安徽省蕪湖、江蘇省無錫&蘇州、青海省ゴルム

 

表3) 中国民間航空全体の2003年の通期業績等

「中国民航報」2004年3月13日による

 

 表3)の通り、中国航空業界の通期取扱量は、旅客・貨物ともにプラス成長となる見込みである。旅客輸送については国内線が下期回復したことを受けて全体ではプラスに転じた。但し、国際線及び香港線については、2桁の減少となり、総量でも前年までの2桁成長には及ばなかった。貨物輸送については、中国の経済成長を反映して引き続き高い成長を持続している。

 (5)中国の航空輸送における全般的な今後の見通しと課題

1.旺盛な需要と関連施策

 中国の航空輸送は、上述の通り、昨年SARSの影響により、一時的に成長が鈍化したものの、全般的には、WTOへの加盟等を機会としてますます加速する「世界の工場」としての中国の経済成長に伴う商用旅客、航空貨物輸送の堅調かつ高水準の伸びをベースとしつつ、飛躍的な成長が期待されるところである。

 さらに、2008年の北京五輪、2010年の上海万博等の開催により、国際観光需要のインフラが整備とそれに伴う需要の伸張と、中国国内の個人所得の伸びに伴う富裕層を中心とした観光需要に火がつくことにより、劇的な発展が中期的には見込まれることとなるであろう。

(1). 観光に関わる至近の政府施策

 中国本土から香港への個人旅行について、更に対象地域が拡大される見通しである。これにより、2004年内には、本土32都市から香港への個人旅行が可能となり、一層の航空需要の拡大が見込まれる。

時期

対象地域

現在対象地域

北京、上海、並びに広州内14都市(広州、深セン、珠海等)

2004/05/01から

広州内7都市(陽江、茂名等)

年内予定

江蘇省、浙江省、福建省の9都市

表4)香港への個人旅行解禁対象地域

 

(2). 日本人の短期入国査証の免除

 2003年9月1日より、中国政府は、一般用パスポートを所持する短期中国訪問の日本人に対する入国査証を免除することとした。これにより、入国日より出国日までの中国滞在期間が15日を超えない商用、観光等の日本人旅客は査証の取得が不要となり、特に観光需要の更なる開拓が見込まれる。

2.制約要因

 このように、中国の航空輸送は需要自体が飛躍的に増大する可能性が十分あるものの、一方でこれに伴うインフラ整備についても加速的に進める必要があり、この進捗如何によっては、大きな制約要因ともなりかねない状況である。

(1).混雑空港に関わる課題

 北京首都国際空港や上海浦東国際空港等の混雑空港は、発着枠が過密となっており航空各社が必要とする時間の発着枠を適切に確保することが難しくなっている。

 北京首都国際機場有限公司は、北京首都国際空港第3期拡張工事全体計画作成等の予備調査を開始しており、これらの進捗に期待したいところである。

図2) 北京首都国際空港の発着回数推移(単位万回)

「中国民航報」2004年3月13日による

 また、表5)の通り、2003年の旅客・貨物の取扱実績は、SARS等の影響で一時的に成長が鈍化したものの、多くの空港がプラス成長となっている。今後とも、堅調に推移するものと思われ、旅客ターミナルビル、貨物取扱施設等のインフラ整備も加速する必要があるように推察される。

空港名

旅 客

(万人)

前年比

貨 物

(万㌧)

前年比

発着回数

(万回)

前年比

北 京

2,436

△10.3%

66.2

5.3%

23.60

△2.48%

上海/浦東

2,473

0.06%

161.4

22.6%

24.36

8.18%

上海/虹橋

深セン

1,000

6.9%

 

 

成 都

820

8.7%

22.3

9.3%

8.30

6.93%

海 口

600

7.1%

 

 

杭 州

435

12.8%

11.2

6.6%

5.10

12.8%

アモイ

430

1.0%

15.0

36.4%

5.50

6.0%

大 連

342

2.6%

9.5

2.2%

3.50

△6.7%

青 島

348

8.0%

7.5

15.0%

 

南 京

332

4.1%

9.7

18.4%

 

瀋 陽

300

13.5%

8.9

19.9%

3.14

3.9%

表5) 2003年中国主要空港取扱実績

「中国民航報」2004年2月29日現在判明分

 

(2).航空路の適切な確保と管制方法の更なる充実

 航空路と管制方法は、航空機の路線便数を決定する上での基本となるインフラである。混雑空港の発着回数増大等を実施する上で、これら航空輸送の基本インフラについても適切に高度化する必要がある。

日中間航空輸送の至近の動向

  • 至近の需要動向

 旅客については、SARSにより需要は大幅に減少した。その後、商用需要については、回復しつつあるが、観光需要については、鳥インフルエンザ等の影響もあり、日本人観光需要の回復が鈍い。しかしながら中期的には、堅調な伸張が期待できるものと推察される。

貨物需要については、SARS等の影響も限定的であり、需要は堅調である。

  • 日中航空当局間協議

 国土交通省は、2003年7月29日-31日にかけて東京にて開催された日中航空当局間協議における合意事項を下記の通り発表した。

◆輸送力

 (旅客)日中双方、B747相当機材で双方週35便の増便を可能とする。

 (貨物)日中双方、B747相当機材で双方週4便の増便を可能とする。

◆地点

 現行の双方発着地点(18地点)に、それぞれの航空当局が指定する3地点を追加。

◆貨物便のコターミナル運航(三角運航)

 貨物便の運航について、我が国航空企業による、中国内の2地点と日本国内地点を結ぶ三角運航が認められる。

◆新規企業の追加

 中国側が日中路線に新たに上海航空、海南航空 及び 厦門航空の3企業の追加を表明。

 

2004年度に向けて

 2003年度は、日中間の国際線輸送については大変厳しい年度であったが、日中間の航空輸送は、引き続き堅調に推移するものと推察される。

 また、表6)の通り、日中間の週間運航便数は、930便(旅客便のみ)にものぼることとなり、更なる両国間の交流と、両国の経済発展を円滑に支えるインフラとなることが期待されるであろう。

表6) 日中航空会社別路線便数(2004/04/01)

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